法人の確定申告をする情報システムe-Taxはすこぶる使いにくいということで、前回、まず第一に改善すべきところを述べました。今回は、どうしてこんなものが出来上がったのか考察し、どうすればよかったのか提案します。
なにしろ、どこの会社が請け負ったのかwebで検索しても出てきません。はっきり申しますが、作った会社が胸を張って「e-Taxは私たちが作りました」と宣伝できるようなしろものではありません。作った側にも責任はあり、それは前回申しました。しかしそれよりも作らせた側にはもっと多くの問題があります。
誤解ないよう断りますと、確定申告を紙の書類ではなくパソコンやスマホを使って電子申告できるようデジタル化しようという発想は正しいのです。
それでどうしよう、というところで間違えました。
情報システムを作るとき、はじめに要件定義というプロセスがあります。その会議でこんな発言をする人がありました。いまの確定申告の書類はそのままe-Taxから出力されねばならぬ。
見てきたように物を言いますが、かつて難関の公務員試験をパスした明晰な頭脳を持っていた人が、こんな愚かな主張をしました。一人や二人ではない、むしろこれに同調する人が多数派でした。
これだけでも彼らがデジタル化のなんたるかに十分に疎いことは十二分に分かるのですが、それどころかひょっとするとこれがe-Taxの一丁目の一番地だったのかもしれません。すなわち、いまの確定申告の書類をパソコンで入力するシステムを作るのだ。
これのどこが間違いなのか、なぜに愚かと断ぜるか、ひとことで言いますと、目的と手段を混同しているのです。
確定申告の書類をパソコンから出すことは手段であって、それを目的としてはいけません。あくまでも目的は、行政の効率化でなければなりません。
言うまでもないことですが、紙の書類を人が突き合わせて確認してハンコを押すという行政システムは、前時代的で非効率です。
その非効率さは去年からのコロナ騒ぎにおいても顕在化しました。本当に困っている事業者に給付金を渡せない、協力金の支給が遅い、助成金が計算できない、支援金の対象を絞れない、何をやっているのだろう。
弊社も私も協力金も助成金も支援金ももらっていませんが、とは言ってもそれは誇るべきことではなく、きちんと申請してきちんともらっている会社を非難するつもりは毛頭ありませんが、それにしてもあれはどのくらい公平なのだろうか、不審があります。
今年の1月、GoToEatのポイントを使おうと予約した八重洲口近くの雑居ビルのお店で、その建物の前まで足を運びましても、そのお店の看板はない。他のお店が入っているようでして、入り口は一つ、外にエレベーターも階段もない。1階のお店の人にここかと聞きますと、そうだここだと言う。この中を通って、3階に行けと言われる。
なるほど、もともとはビル全体で一つのお店だったのを、フロアごとに別のお店にして登録したのか、と納得しました。
三つのお店に分割すると補助金は3倍になります。
これで3倍の金額をゲットするのは不正でも違法でもないのかもしれませんが、私が国税局や税務署の方々に申し上げたいのは、税務調査に入るのでしたらこのような会社を優先してほしいということです。それで、このような会社をどのようにピックアップするかというと、そこがデジタル化のねらいであります。
法人の確定申告の書類で、数字を埋めるところを手で書く代わりに、そのままパソコンで入力させても仕方ないので、そうではなくて、たとえば弥生会計のすべての仕訳のデータを読み込んだら自動的に確定申告書類が出てきて追加で税金の仕訳も転記してくれるような、そんなe-Taxはダメでしょうか。
Webによると税務調査に入られたら仕訳データはすべて見られるわけですが、先んじてそれを毎年まるごとアップロードしておくシステムです。
現在、すべての法人には法人番号というものがついていて、webで誰でも調べることができます。
法人間の取引のすべてにこの番号の入力を義務付ければ、売上を過少申告して脱税しようとする会社も、循環取引して売上を水増ししようとする会社も、たやすく見つけられます。
そういうルールはいかがでしょう。このルールに従えば法人税率を5%下げます、と言ってくれれば私は喜んで入力します。
会社が給料を払った従業員の個人番号、マイナンバーは報告が必要です。従業員じゃない人のマイナンバーは把握したくない。個人事業主には別に検索可能な個人事業番号を付与してください。コロナ禍では、事業なんてまったくしていないのに、私は個人事業主だと虚偽の申告をして補助金を不正にもらったケースも多くあったそうです。
真面目に働いて真面目に税金を納めてきた人が苦しんでいても補助金を出さず、ずる賢い人が3倍の補助金を懐に入れるシステムはおかしくないでしょうか。行政の非効率が原因ならばゆゆしくゆるせないところです。
公正な世の中であってほしい。私は、e-Taxのデジタル化の意義をそこに見出せるのです。
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